『空の境界』 俯瞰風景(ネタバレしかない)

空の境界』を読み始めてみた。第1章。

 

式さんが浮遊できる女性・霧江さんに拐われた黒桐くんを取り返すという筋書きだけ見るとなんだか氷の女王みたいな物語。だけど超パンク!中高生がめろめろになるなこれは。

 

★人間関係の整理

式さん

両儀という伝統のありそうな家に生まれる。月は世界の穴という話を家でされてる。

事故のせいで人格が連続している実感が持てない。事故前の自分と事故後の自分が連続していないので、今までの人生に実感が持てない。自身を喪失しており、過去の自分を取り戻したいと考えている。

一般的な道徳倫理には関心があまりなさそう。

人の致命的なポイントが視える。

黒桐くんを拠り所にしている。

 

霧江さん

死ぬまで病院から出られない身体。普通なら既に死んでいてもおかしくない状態。

巫条という祈祷の家の生まれで、元は呪い屋だったらしく、外界への強い憧れが憎しみになり、やがて視界が肉体から離れて浮遊した。

何者か、がその浮遊した意識に器を与え、器を持って浮遊した霧江は無意識のうちに浮遊している少女たちに寂しさから声をかけ、結果として8人を墜落死させた(無意識下では飛べるけど意識しては人は飛べないという理屈が存在しており、無意識の少女たちに声をかけて意識させた結果、少女たちは死んでしまった)。

 

黒桐くん

探索の才能があるらしい。

8月頭に式さんの家にやってきて、蝶々とトンボの夢を見て目覚めたら8月が残り3日になっていたが、本人はさほど違和感を覚えていない様子。

霧江さんは一緒に飛行させてくれそうな人として黒桐くんを捕まえたようだが、失敗した模様。彼には何があるのか?

 

橙子さん

創造できる人。雇い主。

 

鮮花ちゃん

黒桐くんのいもうとらしい。

浮遊する霧江さんを見かけ、ラストで橙子さんと一緒に墜落する霧江さんに遭遇するが、無邪気な様子。

 

★本章の舞台装置

・俯瞰

・浮遊と飛行と墜落

・無意識と意識

 

★本章における投げかけ

・意図せずに犯した罪と人はどう向き合うのか

(作中)罪によって進む道を決めるな、決めた道で罪を背負え

要するに、自分は人を殺したから死ななければならない、とかそういう決め方をするなよっていうのが橙子さんの理屈かなあ。

 

・自殺は正しいのか

(作中)自殺は事情がどうあれ甘えや弱さであって、本当は生き続けないといけない

生きているだけで人を殺すようなレトロウイルスにかかった人が自ら死を選ぶという選択について、世の中を敵に回すのはしんどいから死んでおく、それは弱いからだ、というのが黒桐くんの理屈。

 

なんとなく、世の中に殺されるなよって強いメッセージ性を受信する。

例えが強烈すぎる気がするけど、世の中の物差しや視線(ここで一般道徳!)で考えずに自分の頭で考えて決めろってことかなあ。パンクで好きですそういうの。

自分が生きてる価値がないとか、死ぬしかないっていうのは、外の圧力がかかってることが多分多くて、誰かが勝手な根拠で振りかざした正しさにやられちゃってるだけだと思うんだよなあ。

例えが強いのは何か理由があるのだろうか。解釈不足か情報不足か。殺人レトロウイルスでも自殺せずに逃げる隠れる特殊機関に自分を売り込むetcって選択肢はあり得るかもだけどそういうことか?

 

★所感

おもしろい!とても。

中高生の時に読んでたらかぶれてめろめろになってたかも。今も好きだな。

不思議を舞台装置に使ってはいるけれど、問いかけているのは普遍的な問いだな。意図せずとんでもない罪を犯した時どうするのか?また、自殺は選択肢として正しいのか?

そして登場人物の探究がまたわくわくする。目の前で人が死んだというのに実に平静そうにみえ、情が薄そうに見えるけど情はありそうで。式さんの自己同一性を見失うという異常な状況設定、以前の自分を取り戻すのか投げ捨てて今を進むのか。

一般的な道徳や倫理をぺろっと語る黒桐くん本人もそんなこと重んじてない人ではないかな、式さんと橙子さんはそういうのに興味がなさそうだな。押し付けられても意味が感じられないのだろう。

とりあえず1章で分かる情報だけで読み解いてみたけど、後から全然違ったぜーってことはありえそうだな。