空の境界 下巻の最終章 ※ネタバレばかり

再読!

やっぱり7章からなだれ込む内容じゃないんだよな。

今初読感想読み返したら解釈違いがひどい。ずたぼろだ。

 

・第3の「シキ」

幹也が式に高校に入る前に出会っていると言っていたのは、彼女曰く肉体(カラ、殻?)に宿る人格のことだったらしい。

人間は肉体に基づいて知性を作っていく。知性はそれを生んだ肉体に宿る人格を意識することがない。

肉体に宿る人格は『』…虚無を起源としていて、それこそが荒耶宗蓮の求めた根源の渦(の一部)、起源を起こされたシキは消えていくはずだった人格を持ち続けている。…難しいな…。

荒耶が人生をかけてたどり着こう、式から開こうとしてできなかった根源の渦が、幹也の前にこんにちはーと現れた、それも2回も。

肉体に人格があり、そこから知性が作られるというのはおもしろかった。一生付き合わないといけない肉体に基づいて、人は物を考え行動するっていうのはなるほどー。だから人は肉体から逃れられないし、同じ種でありながら多様なんだよなあ。

 

・式の殺人衝動の根源

最後にして「式はなぜ殺したいのか」が明かされる。起源を虚無とし虚無を求める式の肉体が、全てのものを虚無に帰したがるという、非常にシンプルな説明。それを肉体の人格であるシキが「式ではなく私の仕業」と引き受けて、舞台から去っていく。

幹也の前で、作中式が苦悩し続けた殺人衝動の種明かしがなされた。そうして、特別な眼を持つ女の子だけが残る。

 

黒桐幹也の孤独

シキは幹也の今以上・特別を求めない普通さに対して、平均的に生き、平均的に死んでいくが故に誰にも気づかれず、顧みられることもないとその孤独について言及する。普通であるが故に、誰も彼を深く理解しようとしない。

『幸せな日々の結晶のような彼。なら一人きりだったのは、果たしてどちらだったんだろう。』

「だった」と過去形になっている。一人きりだったのは、果たして式と幹也どちらだったのか。どちらにせよ、二人は出会って孤独ではなくなったということなのだろう。

他人との決して埋まらない境界を空にしたいという、何人にも叶わない一般論。みんな結局一人ぼっちで、他人(誰か)との境界を無くそうと足掻いている。

幹也も式も、出会わなければ他人との境界を埋めたいと願わなかったかもしれない。一人ぼっちが出会い、今や命がけでお互いの境界を無くそうと足掻いている。

境界を無くすというのは叶わぬ夢ゆえに言及しにくいけれど、理解したいと願うこと、一緒にいたいと願うこと、そのために足掻くことで境界は空っぽになっていくのだろうか。

 

幹也については何考えてるか分からないと頭を捻ってきたけど、つまらないよりはおもしろい方がいいと思っている人物なのは本人の発言からも分かる。そしてそのおもしろいに対する関心は、普通を説く普段の彼からは逸脱して、違法で異能で異常な世界へ躊躇なく彼を飛び込ませる。

その行動から、非常に名探偵(あるいは探偵助手)の気質に似た、好奇心に殺されるタイプの人物像が浮かび上がる。幹也としてはおもしろいなら死んでもいいと思っているようなところが散見される。つまらない未来よりも死を選んだりもする。

しかも自主的におもしろそうなところに首を突っ込んでいるわけではない。二つ返事で依頼を引き受け、人に付き合って現場に突入する。周りから見ればなんだこのお人好しは、ということになるが、幹也自身はおもしろいからそうしている、となるか。幹也のおもしろいについては、簡単に言及しにくいように思う。読み足りない。

そんな幹也も式のことについては自分の意思で接近し、真相を追いかけて、彼女を手に入れたわけで、幹也にとっての式はどういう存在なんだろうか。式がいない世界、式と一緒に生きられない世界を生きるのはつまらないとは思っていそうだ。

 

8章は示唆に富んでいる。

これはやはり、ハッピーエンドを迎えた物語なのだった。

 

5章で投げたとはいえ、1話ずつ読み進めては感想を書いてみた。やっぱり全部明かされてからそれでも残る疑問を追求していった方が効率いいけれど、初読でしか得られない感想っていうのもあり、これはこれでおもしろい試みだったような気もする。

ほぼ徒労に終わるのは頂けないから展開の予想はしない方がいいなというのが改善点だろうか。その回で受けた印象とか持った感想を書き留めておくのは、意外と意義があるかもしれない。