小話 

ああもう、仕事が終わらない!

世間は残業しないのが美徳みたいな風潮で、なのに私ときたら目の前の仕事すら終わってくれない。そしてまだ水曜日だけどもう疲れたので正直全部放り出して帰りたい。

『軟弱だなあ!』

周りに人はいないはずなのに、すぐそばで声が聞こえた。

『こっちこっち』

やたらとガサガサ音がする手元を見ると、キャラクターがプリントされた紙切れが小さく踊っている。動いているのはそのキャラクター、洋画に出てきそうな不死身っぽい男のイラストだった。

「え…」

固まること1分。からくりは理解不能だけど、イラストが動いていることだけは把握した。

『よう、この俺が君を真の社畜に育て上げてやろう。そして俺が半ばにした野望を叶えてくれ!』

「真の…社畜…?」

『そうとも。何を隠そうこの俺は、寝ても覚めても仕事のことを考え続けてついには寝るのをやめて過労死したここの元社畜だッッ!』

「え、やだ不吉」

『安心しろ。俺は死んだが失敗から学んだ。真に会社のためになるのは死なない社畜だとッ!』

「今日はもう帰ろう」

疲れてるんだ。やばいなこんな変な妖精が見えるなんて。帰って寝ろと脳みそが警告を発してるんだ。死なない社畜が良い社畜…ごもっとも。

私は喋り続ける紙を他の紙の束の上に重ねて、シュレッダーに向かった。

『聞いているのかッ?俺が来たからにはもう安心だ。君を立派な社畜に…え、なにこのごりごりって』

さらばだ妖精さん。警告をありがとう。私今日は帰って寝るよ。

『I‘ll be back!!!』

妖精…もとい社畜おじさんは、親指を立ててシュレッダーに呑み込まれていった。合掌。

 

※シュレッダーに紙がのまれていくのをみてたら、アイルビーバックじゃんって思ったので。元ネタ知らんけど。絵描いて実演するのも楽しそうだな、一人でムービー撮ってさ。